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筑波大学ギター・マンドリン部同窓生のコミュニティ・サイト

大村拓 連載

ジェローム・カーンを知ってますか?

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第4回 ダンスの神様 フレッド・アステア

 前回紹介した映画『ロバータ』に準主役として出演していたフレッド・アステアは、この他にあと2本、ジェローム・カーンが音楽を担当した映画に出演しています。それは『有頂天時代(スイング・タイム)』(1936)と『晴れて今宵は』(1947)です。これらの映画についてお話しする前に、フレッド・アステアの素晴らしさについて語ってみたいと思います。

 フレッド・アステアはダンスの神様とも称される偉大なミュージカル・スターです。ミュージカルに詳しくない人でもその名前くらいは知っている人が多いことでしょう。彼の全盛期は1930〜40年代で、ミュージカル映画の黎明期において一世を風靡しました。この時代の作品は一般には目にすることは少ないものですが、今では著作権が切れ、パブリック・ドメイン入りしたことで、安価にDVDで見ることができるようになりました。

 アステアの魅力はなんと言ってもダンスです。実を言うと、彼の歌唱はイマイチですし、お芝居も上手いとは言い難い。ルックスも同類の私が言うのもなんですが、ちょっぴりハゲてます。それでもダンスは言葉にできないほど素晴らしいのです。彼のダンスは重力に逆らうかのように軽々と宙を舞います。手足の先端に至るまですべての仕草がエレガントです。全身で刻まれるリズムは正確無比です。彼はダンスで会話をします。彼と踊れば、お相手は魔法にかかったように虜になってしまいます。言葉は不要です。踊るだけで伝わるのです。彼の映画はまさにそんな彼のダンスを中心にすべてが組み立てられているのです。こんな人は後にも先にもいないと思います。唯一無二の存在なのです。

 一方、ストーリーはいつも似たり寄ったりのラブ・コメディです。人間ドラマも社会性も希薄です。でもそれで良いのです。あくまでもメインディッシュはアステアのダンスであり、それ以外はサイドメニューなのですから。

@ 有頂天時代(Swing Time)

 アステアと黄金コンビであったジンジャー・ロジャースとの共演作です。ストーリーはいつもながらのラブ・コメディなので説明するまでもないでしょう。ここでアステアが一目惚れしたダンス教師(ロジャース)に愛を込めて歌うのが、「今宵の君は(The Way You Look Tonight)」です。アカデミー主題歌賞を受賞した名曲で、この後も多くのアーティストたちにカバーされています。ジェローム・カーンの代表曲の一つと言ってよいでしょう。デュアートがギター・ソロ用にご機嫌なアレンジをしているので、演奏してみました。
https://www.youtube.com/watch?v=aZZzfi1ZMR4

 なおこの映画にはもう一曲「ア・ファイン・ロマンス(A Fine Romance)」という名曲が歌われるのですが、ラストシーンで、この2曲を主演の2人が同時に歌って見事にシンクロさせてしまうところが、音楽的なハイライトです。


A 晴れて今宵は(You Were Never Lovelier)

 アステアのお相手は、ロジャースからリタ・ヘイワースに替わっています。恋愛に奥手の娘(ヘイワース)に恋心を目覚めさせるため、父親が娘に匿名で恋文を出すという暴挙に出ます。娘はすっかりその気になり、手紙の主をアステアと勘違いしてしまうという、これまた他愛もないラブ・コメディです。2人のすれ違いの恋を歌ったのが、恋文の一行目に書かれる言葉がタイトルになった「ディアリー・ビラヴド(Dearly Beloved)」です。
https://www.youtube.com/watch?v=fGEBV8r_j0o

 また彼女が、自分の奥手ぶりを主張して歌うのが「アイム・オールド・ファッションド(I'm Old Fashioned)」です。「私って古風な女なのよ。」というアピールです。どちらもデュアートの編曲がありますので、ギターで演奏しています。
https://www.youtube.com/watch?v=tD8iHK7d4OQ


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